「そもそも、会社に経営理念はいるのでしょうか?」
もしあなたが誰かにそう聞かれたら、なんと答えるでしょうか。私にとって、その答えは明確に「絶対に必要」です。それは、経営理念が会社にとっての「拠り所」だから。そしてその感覚は、私自身の個人的な体験と深く結びついています。
■苦しい時期の私を支えた、一つの「夢」
少し、私の話をさせてください。
私が税理士試験になかなか合格できず、暗いトンネルの中にいるような気持ちで悩んでいた時期がありました。そんな時、ふと思い出したのが、幼い頃からのささやかな夢でした。それは「いつか先生になりたい」という夢です。
思い返せば、小学生の頃から人に何かを教えるのが好きでした。その夢を思い出し、「税理士になることが、その夢に繋がるんじゃないか」「いつか自分の事務所を持ったら、その隣によろず屋のような場所を作って、近所の子供たちに勉強やスポーツを教えたい」と考えるようになったのです。
この「夢」が明確になってからは、不思議と力が湧いてきました。苦しい時も、選択を迫られた時も、この夢が私の「拠り所」となり、進むべき道を照らす「判断基準」になってくれたのです。
■会社の夢、それが「ビジョン」になる
この経験から、私は確信しています。
個人にとっての「夢」がその人を支えるように、会社には「経営理念」が必要なのだと。
そして、私たちの会社にも夢があります。それが「日本一、お客様の成功を共に喜べる会計事務所へ」というビジョンです。これは中期経営計画にも掲げている、私たちの揺るぎない目標であり、会社の夢そのものです。
このビジョンがあるからこそ、私たちは日々の業務で迷いません。 例えば、事務所のイベントの様子をSNSにアップすること。以前は「仕事をしていないと思われたらどうしよう」と迷う気持ちもありました。しかし今は違います。「お客様の成功を共に喜ぶ」というビジョンがあるからこそ、私たちの楽しんでいる姿を見て「いいね」と言ってくれるお客様との人間関係を大切にしたい。そう心から思えるのです。
最近、お客様から「楽しそうでしたね」「ああいうのって、すごくいいですよね」と声をかけていただく機会が増えました。これは、私たちの価値観に共感してくださる方が、自然と集まってきてくれている証拠。理念が起こした、嬉しい変化です。
■ビジョンを実現するための言葉、「察知する」
会社の夢であるビジョンは、ただ掲げるだけでは意味がありません。それを実現するための具体的な行動が必要です。だからこそ先日、私たちは経営理念の言葉を新しくしました。大切にしていることを、もっと分かりやすく、メンバー全員の行動に繋げるためです。
その新しい理念に加えた言葉の一つが「察知する」です。
お客様の成功を「共に喜ぶ」ためには、まず、お客様自身も気づいていないような小さな変化や、言葉の裏にある本当の想いを「察知する」ことが出発点になります。
- 数字のわずかな変化
- 「今日、なんだか眠そうだな」という様子の変化
- 「結婚祝いの料金は?」という質問の裏にある「大切な人を祝いたい」という温かい気持ち
こうしたサインを感じ取り、相手の心に寄り添うこと。この「察知する力」こそが、お客様にとって、ひいては経営者にとっての「良き補完者」になるために不可欠だと考えています。
理念は、育てていくもの
経営理念も、中期経営計画も、作って終わりではありません。 日々の朝礼や研修で、その言葉の意味を繰り返し伝え続ける。そうすることで、理念はただの言葉ではなく、スタッフ一人ひとりの中で血肉となり、「習慣」となっていきます。
理念の浸透は、最終的にスタッフの「人間形成」にまで繋がると、私は信じています。人として成長し、高まっていく。そんな素敵な仲間が増えれば、もっとお客様に良い影響を与えられる「良い事務所」になるはずです。
理念とは、会社の魂であり、成長の羅針盤。 これからも私たちは、この大切な「拠り所」を全員で育みながら、ビジョンの実現に向けて進んでいきたいと思っています。






